「絶対悲観主義」
という仕事論についての話を伺う機会がありました。
これは楠木建 氏(一橋大学ビジネススクール教授)の話された内容で、書籍(講談社+α新書)にもなっています。
普段から仕事で悩んだり、ストレスに晒されたビジネスパーソンとっては、とてもプラスの効果があると思います。
私なりに理解した要点を紹介します。一部に自己解釈もあると思いますので、詳細は 出版された本を 読んでいただくのがいいと思います。
この主義は「世の中はつねに思い通りにはいかない」という前提を持つことから始まるというもので、しかも絶対という言葉の通り、たった一つの哲学であるとのことです。そしてこれは単純な悲観主義(心配性)とは違うものです。
仕事ではとかく、『成功させなければならない』という呪縛にとらわれて、少し予定からずれただけでも心配したり、常に緊張を強いられてしまい、神経をすり減らすことが多々あります。
これに対し、「自分の思うままに進む仕事なんてほとんどない」という前提で臨むことだと言います。身も蓋もない言い方ですが、それが真実だと直視して覚悟を決めると、本当の困難だと思うことに直面する機会は大きく減るとのことです。
(本当の困難とは、「戦争」と「病気」であり、それ以外のことはほとんどが「気のせい」だと思えるぐらいだとも。。。)
ポイントとしては、
『絶対』と覚悟を決めること。仕事の種類・状況は関係なく、あらゆる点でうまくいかないという前提を持つ。
その結果
『どうせ何か問題が出るんだから、ちょっとやってみるか』という構えで臨むこと。
(上手くいかないなら、やめておこうとなどと諦める人は、元々何とかしたいとか思っていないですね)
この絶対悲観主義について、意識や行動面でのメリットは以下のことがあります。
・実装が簡単であること(心のツマミを 悲観側へ持っておく)、楽観思考はなかなか難しい。
・リスクに対する耐性ができる。日頃の心構えとして覚悟を持っておくと動揺しない。
・実行するのが簡単、すぐやってみることができる。失敗は最初から想定範囲なので、仕事に取りかかるまでのリードタイムが短くなる(先送りグセがなくなる)。
・失敗の味わい方が身に付く(いいねェ。。。 やっぱそうくるよなァ。。。)。対処の仕方も上手くなる。余裕すら生まれる。
・顧客視点に立てる。仕事では取引先や上司・部下もいるが、自分の事情には合わせてくれないので、自然に相手の立場で物事を考えるようになる。その結果、締め切りや約束を守るようにもなる。
・謙虚と思ってもらえる。良い印象を持ってもらえる。
・「成功体験の復讐」を避けることができる。
「成功体験の復讐」とは、一流のアスリートに共通するテーマでもあり、多くの記録を塗り替えたような成功体験に縛られると、後々非常に苦しむことにもなる。
これに対する解決策が『成功しない』ことであり、客観的に成功しても『これは成功と呼べるほどでない』くらいの認識でいるのがよい。
成功の呪縛から自由になれば、スランプに苦しむこともなく淡々とやり続けることが可能になる。
・ごくまれに予想外に上手くいくと、本当にうれしい感情(至福感)を得ることができる。
・自分自身の固有の能力が見えてくる。絶対悲観主義者は褒められても真に受けない。謙虚なのではなく、自分の能力を信用していないから。しかし10年も評価を受けていると、本当の自信と能力が身に付く。
といったところです。
聴講した人、本の読者によって感じ方は違うと思いますが、仕事において日頃から何かとストレスに晒され、メンタル面で消耗する人も多い昨今、こういう絶対悲観主義も大変役に立つ人が多くいるのではないかと思います。
参考にしてみてください。
『絶対悲観主義』 -心配するな、きっとう上手くいかないから-